新しい賃貸ってこの先どんな展望があるんだろうなって話をしたいんです。

【対談】
株式会社くらしコーポレーション 坂本俊二&Hidamari inc 代表取締役 林田直大

坂本俊二
1978年北海道生まれ  日刊不動産ライブラリー編集長  Airbnb大家の会会長 収益不動産のポータルサイト『不動産投資★連合隊』の運営など、長きに渡り不動産投資の現場に関わる。 不動産とインターネットに精通し、これまで多くの不動産会社のWEB戦略に従事、国内外の不動産投資の裏側を見つめて来た経歴を持つ。 株式会社くらしコーポレーション代表取締役社長 株式会社KAI代表取締役社長

 

林田直大
1987年生まれ。熊本の玉名高校を卒業後、2005年に佐賀大学機能物質化学科へ、そして2011年に熊本大学院へと入学。大学時代は、バックパッカーで世界一周や、ブレイクダンス、写真の路上販売などの活動を行う中、シェアハウスとは鹿児島で出会う。「まるで家族のように温かくて、共に笑い合える」そんな心地よい空間に魅せられ、大学院在学中にシェアハウスひだまりをオープン。趣味は読書と漫画。

 

坂本:林田さんは全国でシェアハウスを運営されているんですよね。

林田:はい。元々はゲストハウスが好きでゲストハウスをやりたかったんですよ。ゲストハウスがしたくって海外に勉強に行ってたんです。最初はハンガリーに一ヶ月半ぐらい。ゲストハウスは長くて平均2日3日。そこで出会って別れるのもいいですけど、1ヶ月とか2ヶ月レベルで一緒にご飯食べたりしていると、もう半分家族のような関係性になってきて。。。そうすると、その人の人生観とか仕事観とか生活感とかそういうものが、より深く知れるという感じがすごく良くてシェアハウスもいいなと思ったんです。

坂本:林田さんは、元々、人間に興味があるんですね。しかも普通の人ではなくゲストハウスに泊まるバックパッカーとかそういうオルタナティブな人が好きということですか?

林田:そうですね。当時僕まだ学生だったんですけども、サークルとかバイトとかだと必ず先輩後輩とか上下関係があったりするじゃないですか。でも、ゲストハウスだとフラットな関係を築けるなと。年齢や人種も色々と違ったり基本的に誰が上下って言うのがない関係で出会って、一緒にご飯食べる場ってありそうでないんです。例えば、六十歳で仕事していないけどうまく生きてるおじさんとか、17歳の高校生でいろんなことやっている子だとか、いろいろなバックグランドがある人達と人生や仕事や恋愛の話をすることで知れる新しい発見や価値観にすごく魅力を感じて。

坂本:よく分かります。ゲストハウスに泊るような旅人とか、シェアハウスに住むような若者はヒエラルキーとか上下関係があんまり好きじゃなくってそういう生き方している人多いと思います。私も若い時に10代後半ぐらいの時が、野外フェスとか、レイブ的な物ができ始めた時期で、かなりカルチャーショックを受けて人生が大きく変わりました。初めて会ったおじさんとテントや焚き火しながら敬語もなく一緒に楽しんだり。それまでは普通にメインストリームの価値観だけで生きていたけど、こういう価値観や生き方もあるんだっていうことに気がついてかなり心が楽になって。何でもDIYでできるってことに気がつきました。

林田:坂本さんはなぜ不動産のお仕事をされているんですか?

坂本:私はオルタナティブな価値観を大切にして、音楽イベントのオーガナイズしたり自然食品屋を経営したりしたんですけど、全然食べれなくて。今でこそ、建築にサブカルチャーとかエコを取り入れて、お金にしている人もいますが、当時はその辺と経済の親和性は低かったです。二人目の子供ができた時にこれじゃ食わせられないと思って、若いころにやっていたwebデザインに戻って、不動産投資のポータルサイトの会社に入って、そこから今に至っています。元々はエコハウスとかパーマカルチャー、古民家再生とかオルタナティブなところが好きだったんですが、そういうものは銀行融資が厳しくて、不動産投資や賃貸経営をしています。林田さんとの出会いも、物件紹介でしたね。

林田:私がシェアハウスを熊本を皮切りに、湘南、東京とスタートして福岡進出の際にお世話になったのが坂本社長でした。おかげでシェアハウスひだまり大濠公園をスタートできました。

坂本:もともとが韓国人留学生の寮だった物件がまるごと全空であって、ほとんど手を加えないでそのままスタートできましたよね。

林田:そうでした。良い物件で、人気もあって90%以上満室です。

坂本:新しい価値観なのにシェアハウスが不動産投資の経営としても成り立つっていうのが面白くて。立地がよい西新にもシェアハウス物件を紹介することができて嬉しいです。林田さんにはシェアハウスやコミュニティへの愛を感じるので一緒にお仕事できるのが楽しいんです。

林田:ありがとうございます。いままでシェアハウスに住んでくれた方は良い方ばかりで。熊本でシェアハウスひだまりの5周年パーティをしたときは、100人も来てくれて!やりがいも充実感も感じます。

坂本:シェアハウス人口も増えてきているんですね。そもそも日本の賃貸って世界と比べると高いし、今までの賃貸住宅は嫌だっていう人達の需要が増えているんです。そうなるとシェアハウスはもちろんですが、サブスクリプション型住居サービス「ADDress」も人気があるそうですよ。林田さんはサブスクリプションモデルには参入しようとは思われないんですか?

林田:短期の需要も確かにあって少し考えてはいるんですが、まだやろうとは思っていないんです。僕らの考えとしては最低半年間住んで関係ができてのコミュニティというか。シェアハウスには外国の方も多いんですが、家を簡単に借りれないのでシェアハウスにずっといる方もいるんです。2年間ずっと1日も遅れず家賃を払ってもらった実績があれば、無保証で自社の持っている物件を貸すということもしています。生涯的にそのユーザーに対してどれくらい価値を提供できるかということです。

坂本:今AIとかIOTと言われる中で、リアルに人間と繋がっているっていう。賃貸住宅の入り口なのにコミュニティが発酵している感じですね。昔は汗水流して働いて労働対価としてお金を得ていたけど、今は圧倒的に投資マネーで動いているお金が多くて、かぼちゃの馬車が儲かるといったらそれに流れ、だめになると民泊に流れ、民泊がダメだったらビットコインと、初めのうちは儲かってもすぐに飽和して全滅するの繰り返しで。これって関わっている人間もすごく消耗するし疲弊しますよね。とくに日本人、先進国の人は心が疲れていると思うので、そういう時に人の結びつきコミュニティーがしっかりしていれば厳しい時でも助け合えたりとかブームに踊らされない違うお金の回し方があるとすごく感じます。

林田:同感です。やっぱりこれから人が減っていく中でコミュニティがないと厳しいしと思います。人口が減り、人と人とが支えあっていく必要性がある中で、コミュニティはセーフティネットみたいなものの一旦でもあるかなと思っていますね。だから、もっと今後は重要になってくると思っています。

坂本:林田さんはコミュニティに可能性を感じていてそれに人生をはっている訳でしょ?

林田:そうですね、はい。

坂本:私は今の時代の現状認識っていうのは林田さんと似ているんですが、私の場合は不動産業なのでコミュニティもなんだけど、ハード面の建物なんかで幸福度を高めれたらとここ最近ずっと考えています。やっぱり心地いい空間があるだけで気持ちが変えられると思うんです。

林田:そうですね。シェアハウスってちょっと昔のイメージだと古いところにみんなで住んでいるイメージだったのが、今は友達を呼べるいけているハードが重要だと思います。

坂本:なんかシェアハウスより先にゲストハウスが高品質化になったでしょ? 日本ではNUI.とかLenとかが、ゲストハウスをかっこいいイメージに変えたというか。あれは私の中では、カフェ文化の流れで、カフェの心地よさとか癒しの世界観がゲストハウスや、シェアハウスのイメージアップに繋がったんだと思います。

林田:日本のシェアハウスの最初って70年代ぐらいかと思うのですが、そもそも当時のゲストハウスは決してキレイとは言えなくて。外国人労働者とか旅人が安いから住んでいる感じだったと思います。そこに中長期で住む外国人が増えて、日本人も住むようになって、ゲストハウスとシェアハウスの境目がなくなってきたんですよね。そこにチャンスを見出した人が、安宿っていうイメージを変えていった感じです。イメージが変わったことで、市場が広がって「アドレスホッパー」という新しい生き方まで出てきました。

坂本:NUI.って上の方はゲストハウスでしょ? 2段ベッドとかあるような。でも1階のカフェは泊まってる人も全然関係ない人も利用できるパブリックな空間ですよね。ゲストハウスでああいうスタイルってどうなのかなと思って。例えば福岡で一番初めにやった大濠公園のシェアハウスは3、4、5階みんなの居住だけど1階のカフェはみんな誰でも使えるカフェみたいのとかそういうのはどうなんでしょう?

林田:いいですよね、関係性ができればできるほど人ってそこに滞在する時間が長いので、ゲストハウスのユーザーの滞在率も絶対伸びていると思います。シェアハウスは元々滞在時間は長いですが、カフェを気に入った近隣の方も集まる。パブリックなスペースがあるだけでコミュニティも広がるし、いろいろな可能性がむちゃくちゃ広がると思います。

坂本:今関係性って重要キーワードですね、私も関係性の広さや深さが人間の豊かさとか人生の良し悪しに直結するなと、もちろん昔からそうなんでしょうけど。

林田:昔からそうですね、でも、ネットが発達しちゃったので、その分リアルの価値も高まってきました。

坂本:今はツールも発達して、地球の裏側の会ったことない人とも簡単に友達になれるし、関係性が目に見えるようになったり、関係性に価値が付いたりするような時代ですよね。だからこそ共感度がキーワードになる。共感って言うとついつい価値観近いとか好み近い人で盛り上がる感じだけど、シェアハウスとかだと全然違う考えの人とか全然違う価値観の人との出会いがあって、それが人間を成長させたりしないですか?

林田:そうなんですシェアハウス入ってる人達がみんなパーティーの時にめちゃめちゃいい人達だって言ったじゃないですか、やっぱりシェアハウスでみんな成長していくんですよね。

坂本:いい人になっていく。

林田:そうなんですよ、むしろその入居者の面接もお金とかじゃなくって人を見て1時間ぐらい、すごい人生観とか色々な話をしてから面談で合否を決めるんですけれども、でもやっぱり入ってから 自分が不完全だということを気が付ける場所と言いますか、みんな完全な人間はいないと言いますか、シェアハウスじゃなかったら、この人もう距離を置こうみたいな、普通の出会いでは距離を置くんですけれども、シェアハウスだとどうしても距離って置いたら気まずいので、結局、好きか嫌いかっていうのは関係性の濃淡でしかないから、そこのバランスを取る勉強にはすごくなっていて、この人はこういう嫌なところがあるんだけど、こういう所は好きだっていう、嫌いだったら一切話さないんだけど、でも一緒に住んでるから話さないといけないという折り合いをつけていくという行為で、その人の器が大きくなっていく、それは少なからず絶対に0以上に皆さん確実に大きくなっています。

坂本:シェアハウスで暮らすだけ成長していくっていう。でもそれって面接のときに向上心がある人を入れてっていうのもある?

林田:向上心はもちろんありますけれども、逆に応援したい人もいたりして、コミュニケーション苦手だけど、こういう所で成長したいとか、その時にはちょっとお試しで、1か月とかで入ってみるって事もありますね。

坂本:シェアハウスと教育とか親和性高いですよね。

林田:高いと思いますね、でも、あんまりそっちに振れ過ぎちゃうと、ちょっとまた違う。

坂本:ナチュラルなところって言うのを大切にしているんですね。ひだまりほどコミュニティーにこだわっているところは少ないということでしょうか?リバ邸はどうでしょうか。

林田:リバ邸はコンセプトが「現代の駆け込み寺」。各ハウスに個性のある管理人さんが住み、最近では人生3万円定額プランと銘打って活動されていますね。管理人さんを中心としたコミュニティが形成されているイメージです。

坂本:時代で人の居住もどんどん変わっていく中で、人と人のコミュニティも大事という根底も残っていて安心しました。これからの変化も楽しみだし、今日話せてとても刺激になりました。ありがとうございました。